東大卒プロ講師限定の家庭教師派遣 エクスクルーシブ・アカデミアexclusive-academia E-mail:info@exclusive-academia.com |
■ 東京大学過去問1988年(5) 解答 |
[全訳]
フロリダのリゾートタウンの陽射しの中、ある朝、2人の老人がベンチに座っていた。1人は必死に本に集中しようとし、もう1人つまりハロルド=K=ブラードは、多方面で成功を収めたビジネスマンとしての自身の人生を、彼に語りきかせようとしていた。彼らの足元にはブラードの犬が身を横たえており、その大きく湿った鼻でくるぶしを嗅ぐせいで、話を聞かされている老人は余計に不快な気持ちになっていた。 ブラードは彼の素晴らしい過去を振り返ることが楽しかった。しかし彼は人食い人種の人生を困難にする問題に直面していた。すなわち一人の生きている被害者を繰り返し襲う事は出来なかったのである。彼と彼の犬と共に日中を過ごした人は、二度と同じベンチに座ってくれなかったのである。だから毎回、ブラードは新顔を求めてさまよった。今朝はこの見慣れない老人をすぐに見つけることができて幸運だったのだ。彼は明らかにフロリダに来たばかりで、読書以外する事がなさそうだった。 「そうなんじゃ」ブラードは、彼の講義の最初の1時間を締めくくるように言った。「ワシは一生で5度も財産を築き、そして失ったんじゃ」 「それはもうお聞きしましたよ」と新参の老人は言った(ブラードは彼の名を尋ねることすらしなかったのだ)。「おやめなさい、これ。ダメだよ」彼は犬に言ったが、犬はますます攻撃的に彼のくるぶしに鼻を押し付けていた。 「おお、もう話しておったかの」ブラードは言った。 「2度もです」 「そうか、確かに話しておったかもしれん。2度は不動産で、1度はくず鉄で、1度はオイルで、一度はトラック運送で儲けたんじゃ。ワシはあの当時を一日だって取り消そうなどとは思わん」 「きっとそうなのでしょうね」新参の老人は言った「申し訳ないけれど、犬をどこかへやって貰えないでしょうか。足首のところを嗅ぎ回って、気が狂いそうになるんです」 「プラスチックですな」クックッと笑いながら、ブラードは言った。 「何ですって?」 「プラスチックじゃよ。靴下留めにプラスチックのものが付いているに違いない。ボタンか何かではないかの。こいつはプラスチックに目がないんじゃ。なぜかは分からんが、こいつはほんの小さなプラスチックでも近くにあれば、嗅ぎつけて、噛むんじゃよ。医者に安静にするように言われてなかったら、ワシは今頃プラスチックのビジネスをしているに違いないんじゃが。心臓のせいでな、お分りじゃろう?」 「犬はあそこの木に繋いでおけばよろしいのでは?」新参者は言った。 「ワシは最近の若者に全く我慢がならんのじゃ」ブラードは言った。「やつらは皆、もうフロンティアはないのだとかぬかすのじゃ。しかし今日ほど多くのフロンティアがあった時代があるかね?ホレス=グリーリーが生きていたら何と言うと思うかね?」 「犬の鼻が濡れているんですよ」新参者は自分の足首を引き離そうとしながら言った。「こら、やめなさい」 「鼻が濡れているのは健康な証拠なんですぞ」ブラードは言った。「「プラスチックに向かいなさい、若者よ!」グリーリーならそう言ったでしょうな。「原子に向かいなさい、電子に向かいなさい!」」 その犬は今や新参者の靴下留めに付いたプラスチックのボタンの位置をはっきりと突き止めており、その珍味に歯を押し当てようと夢中になっていた。 「やめてくれ!」新参者は叫んだ。 「チャンスが失われてしまったなんて話するんじゃない」ブラードは言った。「チャンスは国中の扉をノックして、訪れようとしているのじゃ。ワシが若い頃には…」 「申し訳ないが」新参者は冷静に言った。彼は本をピシャリと閉じて、立ち上がり、犬から足首を引き抜いた。「行かなくてはならないのです、ではさようなら」 |
[単語・熟語 level A] |
[単語・熟語 level B] |
[解答]
|
[解説] |
プライバシーポリシー © 2008.エクスクルーシブ・アカデミア〜exclusive-academia〜 All rights reserved. |