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■ 東京大学過去問1994年(5) 解答 |
[全訳]
(ケイティと彼女の双子の弟のパトリックは、アウトバックと呼ばれるオーストラリア内陸の半ば砂漠化した地域の農場に暮らしていた。その年、その地域は厳しい干ばつに見舞われ、雨がほとんど降っていない為、普段から経営の苦しい父親の農場は、危機的状況に陥っていた。) パトリックと私が12歳になり寄宿制の学校に入学するまでは、馬たちが私達の生活で最も重要なものだった。しかし一学期を終えて帰省した時、パトリックはバイクにしか興味を示さなくなっていた。それ以来、彼は休暇の度に、お父さんの古いバイクを乗り回した。 彼の馬だったスモーキーは売りに出された。その時私は泣いたけれど、スモーキーは他の馬たちよりラッキーだったのだ。スモーキーは干ばつの前に、つまり彼の骨には肉が付き、足取りには軽快さが残っている時に、この地を去る事ができたのだから。お父さんはやる餌がなくなった時に、他の二頭の馬を銃で撃ち殺した。しかし馬たちはそれでもなお羊たちよりはラッキーだった。何百頭もの羊は、喉をかき切られて死なねばならなかった。なぜなら全頭分の銃弾が買えなかったからだ。 「私達が学校をやめて、馬たちを残す事はできないの?」私はお母さんに懇願した。「あなたたちの学費は、あなたたちが学校に通えるように、おじいさんが特別に遺してくれたものなのよ」とお母さんは答えた「それ以外の事には使えないわ。それと、この事をお父さんには絶対言っちゃダメよ。本当に怒るから」 お父さんはその時までに、この土地に住む人々全員が破滅すると分かっていた。パトリックと私が良い教育を受ける機会がある分だけ、私たち家族は大半の住民より少しラッキーなのだと、お父さんは考えていたのだ。それが父の唯一の希望だった。パトリックと私が、彼自身より上手くやって、この絶望と悲劇、そして裏切りと敗北の痺れるような感覚から脱出する事だけが。 私とパトリックが14になる年のクリスマスの直後、私達は永久に農園を去る事になった。 しかし私達がそのクリスマス休暇の為にナイジェル・アーノルドと共に帰省した時には、それが最後になるとは思っていなかった。アーノルド夫婦は一番近くに住んでいる隣人だった。息子のナイジェルはその学期で学校をやめる事になっていた。ナイジェル一家は我が家と同じ問題に巻き込まれていたが、うちと違って祖父のお金がなく、ナイジェルは15で学校をやめなければならなくなったのだ。休暇の為に帰省する時は、いつもかなり陽気だったのだが、今回はみんな黙りこんでいた。私は車窓を通して乾ききった風景を見つめた。そして一体何匹の羊が死んでいかねばならないのだろうか、と絶望的に考えた。 母はやつれていた。私の記憶より痩せて、小さくなっていた。母は私達が帰ってきた事を本当に喜んでいたが、同時にいらいらして、少し涙もろくなっていた。 「あなた一人でどうやって時間を潰すのかしら」お休みを言いに私の部屋に入ってきた時に母がそう言った。「今のうちに言っておいた方がいいわね。今回は退屈な休暇になるわ、ケイティ。それにお父さんは長く耐えられそうにないの。あと少しでも打撃を受けたら、壊れてしまうわ。私はお父さんの世話をして、少しでも楽にしてあげたいの。こんな場合、どうすれば少しでも楽になるのか、全く分からないのだけれど」 私は手を伸ばして、お母さんの肩を撫でた。ああ神様、お母さんは痩せ過ぎだわ。「私達の心配はしないで。パトリックには少なくともバイクがあるし、私は何かする事を見つけるわ。宿題をしたっていいんだし」私は何とか冗談を言えた事がかなりうれしかった。 お母さんは笑顔とも受け取れるようなしかめ面をした。「明日は何か料理しましょうか。クリスマスらしいものでも作るといいわね」 私はうめき声をあげそうになるのを堪えた。外が40度にもなるのにクリスマス料理を焼くなんて、楽しいはずがなかった。 「七面鳥は食べられないんでしょ?」 「残念だけどローストチキンね。そのために鶏を二羽残しておいたの」 私が嫌な顔をすると、お母さんは言った。「羊肉じゃないだけ感謝しなさい」 彼女は窓辺に行って、外を眺めた。「私はこの夜空が好きだったの。アウトバックで一番美しいものの一つだと思っていたのだけど。でももうウンザリだわ。星なんて消えてしまえばいいのに」 |
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[解答]
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