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東京大学過去問2000年(5) 解答


[全訳]
 ある日私が家から帰ると、見知らぬ男の人がキッチンにいた。その男の人はコンロで何かを作っていて、鍋をじっと見つめていた。
 「あなたは誰?そこで何をしているの?」私は彼に言った。父が死んでまだ一週間だった。
 その男の人は言った。「しーっ、今はダメだ。ちょっと待ってくれ。」彼には強い外国訛りがあった。
 私は彼が集中している事を知って、「何を作っているの?」と聞いた。
 今度は彼は私を見た。「ポレンタ」と彼は言った。
 私はコンロの方に行って鍋を覗き込んだ。それは黄色がかった、ねばねばした、セモリナだった。「気持ち悪いわ。」私は彼にそう言って、母を探しに行った。
 母は庭にいた。「ママ、男の人がキッチンで料理してる。ポレンタ作ってるって言ってる。」
 「ああ、おかえり。ポレンタ?」と母は言った。(1)母は役にたちそうにないと私は思った。お父さんがここにいてくれたら。「ポレンタって何なのか、私よく知らないの。」母はポツンと言った。
 「お母さん、ポレンタはどうでもいいの。あの人は誰?うちのキッチンであの人は何してるの?」
 「ああ!」母は叫んだ。彼女は薄手の花柄のサマードレスを着ていた。その時私は母がどれだけ痩せているか気が付いた。お母さん、、と私は思った。(2)が私にのしかかってくるように感じて、私は気がつけば泣き出していた。「泣かないで。大丈夫よ。彼は新しい下宿人なの。」そう言って母は私を抱きしめた。
 私はすすり上げながら、目を拭った。「下宿人?」
 「お父さんが死んでしまったから、空いた部屋を貸す必要があると思うの。」と母は説明した。母は振り返って、家の方に歩き始めた。歩き回る下宿人がキッチンにいるのが見えた。私は母の腕を取り、家の中に戻るのを引き止めた。
 「じゃあ、あの人はここで暮らすってこと?」と私は尋ねた。「私達と?つまり、あの人は私達とご飯食べたり、何もかも一緒にするの?」
 「もう彼にとってここは家なの。彼がくつろげるようにしないとね。」そして母は今思い出したかのように付け加えた。「彼の名前はコンスタンチンっていうの。ロシア人よ。」そして母は中に入って行った。
 私はこの情報を飲み込むのに少し時間がかかった。ロシア人。ロシア人という響きはエキゾチックで、彼の非礼も許す気になった。私は母がキッチンに入るのを見た。ロシア人のコンスタンチンは母を見て、笑顔を浮かべた。「マリア!」彼は腕を広げ、母は彼の方へ行った。2人は頬にキスし合った。母は振り向いて、私を手招きした。
 「私の娘よ。」母は言った。(6)の声に私には耳慣れない響きがあった。母は私に手を伸ばした。
 「じゃあ、君がアンナか。」ロシア人は言った。
 彼の口からそんなにすぐ私の名前が出てくるとは思ってなかったので、私は驚いた。私は母を見た。(7)母の表情は何も明かしはしなかった。ロシア人は握手を求めて言った。「コンスタンチンだ。会えて嬉しいよ。君については色々聞いていたんだ。」
 私達は握手をした。どんな風に私の事を色々と聞いていたのか知りたかった(8)が、どう尋ねていいのか分からなかった。少なくともそこに母がいては聞けなかった。
 そのロシア人は振り返って料理に戻った。彼はうちのキッチンに馴染んでいるように見えた。彼はセモリナのような何かに塩胡椒を振って、リビングへとそれを運んだ。なぜだか、母と私は彼について行った。私達はみんな肘掛け椅子に座って、顔を見合わせた。不安をわずかでも感じているのは私だけなのだと、私は思った。
 次の夜、私が遅く帰ると、コンスタンチンと母は、夕食を食べながら、会話を弾ませていた。テーブルにはキャンドルが飾られていた。
 「何事よ?」私は尋ねた。
 「お腹空いたでしょ?」と母は言った。「あなたの分も残してるのよ。キッチンにあるわ。」
 私は腹ぺこだった。「いらない。けっこうよ。」
 私はむっつりと言った。まだ早かったが、私は二階へ上がってベッドに入った。
 しばらくして、母が階段を上がって来るのが聞こえた。私は目を閉じ、深く息をした。「アンナ?アンナ、起きてる?」母は言った。
 私は黙っていた。
 「起きているの知ってるのよ。」と母は言った。
 沈黙が流れた。母がまた話し始めたのは、(10)私はまさに降参しようとしていた時だった。「お父さんは私を愛してくれなかったの。あなたにはそれを知られるべきじゃないと思っていたのだけど。彼は私を愛してなかったの。」母は一語一語恐ろしくはっきりと言った。私の頭にそれを焼き付けようとするかのように。私は目をぎゅっと閉じた。ベッドの中で硬くなって、母が部屋を出ていってくれるのを待った。私はこれら全ての事をいつか乗り越えられるのだろうかと、考えながら。


[単語・熟語 level A]


[単語・熟語 level B]


[解答]
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)しかし、どう尋ねていいのか分からなかった。少なくともそこに母がいては聞けなかった。
(9)
(10)
(11)


[解説]
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