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東京大学過去問2008年(5) 解答


[全訳]
 ジャッキーは、ぼんやりと窓枠にもたれて、家の前の砂浜を見つめていた。見慣れた人影が、ブルーのドレスを着て、ゆっくりと家の方に歩いてくるのが、砂浜の先に見えた。彼女はこんな風に、こっそりと娘を観察できる時間が大好きだった。トニはどんどん成長している。ジャッキーと、動揺している7歳の幼い娘が、ここにやってきたのが、昨日のことのようだった。トニがどれほど父親を愛していたことか!彼女がまだ5歳か6歳の頃、彼らは毎週末、市内から海岸まではるばる出掛けたものだった。そしてトニは、父親について荒れ狂う海に入っていき、勇敢にもその背中にしがみついて、歓喜の叫び声を上げながら、波間で遊ぶのだった。彼女は父親を完全に信頼していた。それなのに彼は、彼女らを捨てたのだった。メッセージを残すことも、何かを残すこともなく。何の前触れもなく。
 彼女は今や、トニの姿をかなりはっきりと見分けられるようになっていた。彼女は、トニが靴を水際の岩の上に置いて、濡れた砂浜に踏み入り、片手を腰に置いて、頭を傾げ、下を見つめてただそこに立ち尽くしているのを見た。何を考えているのだろう?ジャッキーは衝撃的なほどに激しい愛情が、突然沸き上がるのを感じた。「あの子のためなら何だってやるわ」彼女は思わず独り言を言った「何だって」
 過去と決別し新しいスタートをきりたいと考え、8年前、市内からこの家に引っ越してきたのもトニのためだった。きっとここでは、子育てをするのが、都会よりもシンプルで、安全で、快適だろうと思った。そして事実、その通りだった。トニは安全に、学校まで自転車で行き、友達の家まで走って行き来し、ビーチを歩き回ることができた。ジャッキーが仕事で留守の時、放課後に居場所がないなどということは一度もなかった。2人の関係は良好で、トニは彼女を困らせたことは一度もなかった。だから、あと3年もしたら市内に戻り、ティムの所に住む、そして多分彼と結婚するだろう、そうジャッキーは考えていた。
 彼女はチラリと時計を見た。4時だった。彼は7時にやって来るだろう。いつもの金曜日と同じように。彼女はトニだけでなく、彼のことも、世界一愛していた。毎週末、彼はここにやってきて、家族のように共に過ごす。自分と一緒に市内に住むようにと、彼が彼女に強いたことは一度もなかった。彼女がまずはトニの卒業を見届けたいと望んでいることを、彼は理解していたのだ。彼女の準備が整うまで待つつもりだよと、彼は言った。ジャッキーはそうした取り決めがありがたかった。一週間ぶりに会えば、お互いの関係が新鮮に感じられた。毎週末金曜日になると、お互いに話したいことがたくさんあった。準備をすること(つまり髪をシャンプーし、ブローして乾かし、お気に入りの服を着て、素敵に見えるようにすると)は楽しかった。ジャッキーはトニとティムが居てくれることを、神に感謝した。

********

 トニは、濡れた砂に彼女の足を強く押し付けた。彼女はまだ家に帰りたくなかった。考えるべきことが多すぎた。家ではママが、慌ただしく、歌なんかを歌いながら、掃除をして、ウキウキと、ティムを迎える準備をしているだろう。ママのような年齢にもなって、あんな風に振る舞うなんて!あんまりだわ、とトニは考えた。少し哀れみすら覚える。確かにティムはとてもいい人、それは彼女も認めざるを得なかった。彼女の心の一方は、ママに恋人が出来たことを喜んでいた。もう一方は戸惑っていた。やだ、まだうちになんて帰りたくない。
 彼女はビーチの端から端までを見た。そして誰もいないことに安心した。彼女はこのドレスを着ているところを見られるのが嫌だった。これはヒラヒラと、女の子らしすぎる。彼女はついこの間、土曜日のアルバイトに申し込んだのだが、ママがこの服を着ていくように言ったのだ。「この服はとっても素敵だし、これを着たあなたはとても可愛いわ。良い印象を与えることは大切なのよ」と彼女は言った。たしかに、アルバイトには受かった。ママは今、そのニュースを聞きたいと、心待ちにしているだろう。そして賞か何かを取ったみたいに大喜びするに違いない。彼女は時折、ママが何事にもあんなにも夢中にならなければいいのに、と望んだ。でも1ついいこともある。今回は自分のお金が手に入るだろうし、たまには自分の好きな服を買えるだろう。
 1つ確かなことがある。今夜、私はこのドレスは着ない。ママが出掛けさせてくれるように家を出る時には着るけれど、クリッシーの所で着替えよう。色々と面倒だった。以前にはこんなことをしなくてもよかった。ダンスに行く許可をママから貰うだけなのに、とても大変だった。
 「誰か保護者の人はいらっしゃるの?」「お酒は出るの?」「何時に終わるの」などなど、警察の取り締まりみたいだ。他の子の両親はこんなにしつこくなかった。でも私も少なくとも出かける許可は貰えた。ビーチのクラブに行くのは初めてだった。
 クリッシーはママに許可を貰う必要すらないと言った。「あなたのお母さんとボーイフレンドが寝たら、窓から抜け出すだけよ」というのが彼女のアドバイスだった。「どっちみち色んなことが始まるのは遅くなってからだし」しかしトニは、こうしたことは初めてで、そんなことは出来なかった。でもとにかく、トニが色々と早口でまくし立てた結果、ママはオーケーと言ったのだった。トニはいくつかの嘘をつかねばならなかったが、ママは最終的にそれを信じてくれた。「クリッシーのご両親が連れて行ってくれるの。5人の大人が見ててくれるの。お酒は禁止よ。11時半には帰るわ」
 トニは特に最後の項目を言うのがためらわれた。11時半なんて絶対無理!でもいったん家を出てしまえば、帰りが遅くなってもママは気付かないだろう。トニは足を砂の中にねじ込んだ。彼女はこうした嘘について、ほんの少し気まずく感じた。でもなんで私が気にする必要があるの?誰だってやることでしょう?だってそうしなきゃどこにもいけないじゃない。クリッシーを見てよ。クリッシーはこんな風にごまかし続けて1年も経つんだから。


[単語・熟語 level A]


[単語・熟語 level B]


[解答]
(1) イ
(2) out
(3) past behind them and start again
(4) ウ
(5) ウ
(6) 週末に恋人を家に迎えることに年甲斐もなく浮かれている態度。(29字)
(7) イ
(8) ウ
(9) クリッシーはこんな風にごまかし続けて1年も経つんだから。
(10) ウ
(11)(a) オ
(b) イ
(c) エ
(c) ア



[解説]
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