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■ 東京大学過去問2001年(5) 解答 |
[全訳]
彼女は彼に言った。「マクリーディ、あなたの誕生日に何をしたい?」彼女は彼のことをいつもマクリーディと呼んでいた。もう結婚して長いのだから、彼のことをジョンと呼んでいて然るべきだったが、彼女は絶対にそうしなかった。彼は彼女のことをヒルダと呼んでいた。彼女は彼を、まるで彼が他人であるかのように、あるいはテレビで見たことのあるサッカー選手であるかのように、マクリーディと呼ぶのだった。 「子供達はどうしたいって?」彼は言った。 彼女はタバコに火を付けた。彼女がタバコを吸うのはその日曜だけで20本目か30本目だったが、彼は数えるのをやめてしまっていた。 「子供達のことは気にしなくていいのよ、マクリーディ」と彼女は言った。「あなたの誕生日なんだから」 「アイルランドに帰ることだ」と彼は言った。「それが僕のしたいことだよ。永久にあっちに帰ることだ」 彼女はタバコを消した。またか、と彼は思った。彼女はいつだって、あらゆることに関して、考えがコロコロと変わるのだった。 「まともな答えが見つかったら」と彼女は言った。「教えてちょうだい」 彼が庭に出ると、9歳になる娘のケイティが1人で遊んでいた。ケイティと庭には共通点があった。両者とも小さく、どれだけ頑張っても美しくなりそうにないという点だ。なにせケイティは父親似なのだから。運の悪いことに。 今やその父と娘が、荒れ果てた庭にいて、北ロンドンの9月の太陽がかなり暖かく彼らを照らしていた。そしてマクリーディは娘に対して言った。彼は娘を何とか愛そうと懸命だった。「父さんの誕生日に何しようか、ケイティ?」 ケイティはケバケバしいほどにスタイリッシュな小さな人形で遊んでいた。彼女はそうした人形達の美しい脚を掴んで持っていたので、その金色の髪が旗のようになびいた。「知らない」彼女は言った。 彼はプラスチック製のガーデンチェアに座り、彼女は美しい人形を並べて置いた。「シンディとバービーに棘が刺さりそうなの」と彼女は文句を言った。 「誰が棘を刺すんだい、ケイティ?」 「あの草よ、もちろん。草刈りしてよね」 「とんでもない」と彼は言い、そちらを見やると、その草は獰猛に生い茂り、ヒルダが何年も前に植えたバラを駆逐しようとしていた。「あの草は残してあるんだよ、ケイティ」 「なぜ?」 「スープにするのさ。イラクサのスープだよ。食べると綺麗になるんだ」 彼女は真剣に彼を見つめた。9年間、彼女は父の言うことを何でも信じてきた。しかし今や彼女は崖っ縁まで来ており、飛び立つ寸前だった。 「本当に?」 「本当さ。見ていてごらん」 その日、しばらくして息子のマイケルが帰ってきて、自分の部屋に上がろうとするのを、マクリーディは呼び止めた。息子は13歳だった。 「父さんの誕生日にみんなで何をするかで、母さんが迷ってるんだけど、何か君に考えがあったら・・・」 マイケルは肩をすくめた。自分が確固として誰にも干渉されない存在だと知っているかのように。彼は未来そのものだった。彼は現在というものにいかなる注意を払う必要もなかった。「ないよ」と彼は言った。「特に何もない。それに結局パパは何歳になるんだい?」 「45歳さ。もしかしたら46歳かもしれない。よく覚えてないよ」 「ちょっとパパ。自分の歳が分からない人なんていないよ」 「でも父さんは分からないんだ。アイルランドを出てからはね。向こうにいた頃は覚えていたんだけど、ずっと前のことだね」 「だったらママに聞けばいいよ。ママは知ってるはずだから」 マイケルは階段を上っていった。履いている靴のひどい臭いをカーペットに擦り付けながら。思考もなければ、見解もない。特にない。 そして再びマクリーディは独りになった。 |
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